第1回 法人の種類
  第2回 法人化に向けた手続き
  第3回 法人における定款①:総則・会員・総会
  第4回 法人における定款②:役員・理事会
  第5回 法人における会計


   第1回 法人の種類

 このコラムでは県士会ニュースに掲載される「法人化へ向けてのはなし」を補う形でより詳細な内容を知りたい方に向けた説明を行いたいと考えています。まず第1回目では法人の種類について説明したいと思います。

 図1にあるように法人には大きく分けると公法人と私法人があり私法人は営利を目的とした営利法人(一般によくいわれる会社組織)と営利を目的としない非営利法人さらに共益目的の中間法人があります。県士会が取得に向けて準備を進めているの「一般社団法人」と呼ばれる種類のものです。一般社団法人は右図の中では非営利法人の中の社団法人に属します。営利法人と非営利法人の大きな違いは財産の分与にあります。つまり営利法人は団体活動によって得た利益を分配することができます。しかし非営利法人は全く営利活動が行えないわけではありませんが(一部制限はあります)その活動によって得た利益を分配することができません。つまり得た利益を団体活動の為に使うことはできても個人の利益として還元することができないのです。

 さて一般社団法人ですが図2のように法制度上は2つに分類されており、一般社団法人や一般財団法人はその公益性が認められると(公益認定と言います)公益社団法人や公益財団法人になることができます。公益法人には大別するとこの一般社団法人と公益社団法人以外にNPO法人があります。まずNPO法人ですがこれは会員を限定することができず、専門職の職能団体としては不向きです。一般社団法人は設立が容易ですが社会的信用に乏しく税制面での優遇もあまりありません。それに対して公益社団法人は一般社団法人からステップアップする必要はありますが税制面での優遇もある公益性を認められた社会的信用のある団体です。しかしその活動の公益性を常に監督され、要件を満たさない場合は解散もしくは一般社団法人へ移行させられてしまいます。その際は法人活動によって得られた財産が全て没収されてしまうため、活動の方向性がきわめて明確に且つ安定していないと安易に選択することはできません。


図1


図2
 法人の種類は多種にわたりますがその団体の特性や会員(社員)の種類によって適切な選択を行わないと法人化によってむしろ活動に制限が生じてしまうことになります。このように法人の種類が整備された背景には明治29年より続いてきた法人の形態が業務独占や天下り等の批判を受け、団体としての活動実態を含めた透明性を高める必要性が生じてきたからです。昨年度行われた公益法人制度改革は活動実態のない団体に対しての優遇的な扱いを見直すための大改革なのです。

 法人化が我々山梨県作業療法士会の進むべき道を改めて見直すよい機会になればと考えています。次回は法人化にむけた手続きについてお話したいと思います。

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   第2回 法人化に向けた手続き

 今回は法人化にむけた手続きについてお話したいと思います。実際には一般社団法人は図3のような流れによって設立が可能となります。順を追って説明しますと、法人化のためには2名以上の設立者(会員)が必要です。逆にいえば二人いれば法人は設立が可能です。次に、一般社団法人を設立するにあたって最も注意が必要なのが定款等の書類作成になります。特に定款と呼ばれる書類はとても重要です。定款は今の県士会でいえば規約に当たります。一般社団法人はそれに関する法律に乗っ取って運営されますが法律にない部分もしくは法律により定義付けが求められる部分に関しては定款に記載する必要があります。定款に関しては次回から少し説明をさせて頂くのでここでは省略します。書類ができましたら、それを公証人役場という機関に持ち込んでその定款が法律に乗っ取った適正なものであることを証明してもらいます。その証明を持って法務局で設立登記申請を行うのです。

 ここで理解していただきたいのが一般社団法人は登記であって承認はいらないということです。つまり書類さえ整っていればだれでも設立が可能であり、社会的信用性や資産規模等は全く問われないのです。公序良俗に反しないものであれば同好会的なものでも法人化は可能です。

 この設立の流れを県士会に当てはめた場合今後のスケジュールはおおよそ図4のようになります。今までに定款の素案作成及び理事会での検討が行われています。会員向けの説明に関しては県士会ニュースやホームページ上で事前の説明を行った後に総会等で説明をさせて頂く予定です。法人化へ向けての最終決定は定期もしくは臨時総会での決議によりますが他県士会や協会の動向を見ながら皆さんに提案をしていきたいと考えています。

 次回は法人化作業の中心となる定款について皆さんにご説明させていただきたいと思います。

図3

図4

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   第3回 法人における定款①:総則・会員・総会

 今回は法人化作業の中心となる定款について皆さんにご説明させていただきたいと思います。定款は現行県士会においては規約に相当するものだということは前回説明させていただきました。しかし定款はその法人の性質や活動の方向性を決定づけるものであり、法人においては安易に変更することはできません。定款に記載する内容は法律によって定められた部分と、団体にとってあらかじめ決めておいたほうが良い部分とに分かれます。定款の内容は多岐にわたりますが、皆さんにも理解していただいておいて法が良い内容を中心に抜粋してお話しさせていただければと思います。

1. 総則
 これは会の名称や所在地、目的や事業など団体の基本構造について定義づけることになります。山梨県作業療法士会の場合、正式名称は「一般社団法人山梨県作業療法士会」という名称を予定しています。団体としての活動や契約等はすべてこの名称を用いることになります。また所在地についてですがこれは事務所を構えていなくても所属施設の住所でもOKです。しかし事務局が市町村をまたいで変更になった場合には定款の変更が必要になります。目的や事業は前の規約と大きな変更はありませんが公益法人を目指す際にはこの目的や事業に公益目的事業を明記する必要があります。

2. 会員
 一般社団法人では会員のことを社員とよびます。定款上はそれを会員と読み替えています。どういったメンバーを会員として求めるのかが重要で入会や退会のプロセスを明確にして置く必要があります。県士会では正会員を社団法人日本作業療法士協会(以下協会)の会員としていますが対象となる団体の名称が変更になった場合にはここも変えないとならないため協会には早く法人格を再定義していただけると助かります。
3. 総会
 正式には社員総会となります。総会において大きな変更点は定足数が正会員の2分の1の出席を持って成立するということです。(現行は3分の1です)平成21年度の協会の総会でもギリギリまで委任上の確保に関して依頼があったことを記憶している方もいると思いますが1万2289通の委任状を確保しましたが2分の1の定足数には5000通余り不足していたようです。もしも協会が一般もしくは公益の社団法人に移行していたとすると総会は不成立で改めてやり直しということになってしまいます。
 法人化をするということは会員一人ひとりの社員としての自覚がとても重要で、それがなければ団体としての存続も危うい状態になってしまいます。100%の出席および委任状の提出を会員一人ひとりが心がける必要があります。

 次回は定款の続きをお話しさせていただきたいと思います。おもに役員や理事会の位置づけです。この部分は今の県士会の在り方とは大きく変わる部分ですので少し詳しくお話しさせていただきます。

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   第4回 法人における定款②:役員・理事会

 今回は前回に引き続き定款について皆さんにご説明させていただきたいと思います。今回は役員や理事会の位置づけに関してお話しさせていただきます。

1. 役員
 一般社団法人では理事を置き、その中の1名を代表理事とします。また理事会設置型法人の場合は幹事を置く必要があります。大規模法人は会計監査人も置きます。
① 役員の選任について
 役員の選任について、今までの県士会の選任方法は会長、副会長、理事、幹事をそれぞれ直接選挙で選任していました。しかし、一般社団法人において、法律上は会長や副会長は直接選挙にて選任することができません。理事会責任の明確化という部分で理事による互選で代表理事が決定されることになっています。しかしその後の解釈資料で直接の選任は行えませんが、総会での決議を参考にすることはできます。今のところ県士会は理事及び監事は総会での選任、代表理事(会長)は総会での決議を参考に理事会で決定、副会長は理事会による互選ということで定款を作成しています。
② 幹事について
 一般社団法人において幹事はとても重要な役員で、唯一ほかの法人との兼任を制限されています。当法人で幹事の職に就いた場合、他の法人の理事を兼任することはできません。また理事の解任は総会で過半数により可能ですが幹事は3分の2の議決が必要です。このように幹事の扱いがほかの役員と異なるのは、法人の運営が適正に行われているかどうかの監視役として重要な位置にあるからです。そのため幹事には理事会の招集等の権限が与えられています。いわゆる名誉職などではなく、実質的な役割が求められているのが一般社団法人における幹事といえます。

2. 理事会
 理事会は法人の業務執行の決定、理事の職務の執行の監督、会長、副会長、業務執行理事の選定及び解職などを行います。具体的な運営規則は「定款」ではなく「一般社団法人山梨県作業療法士会運営規則」によって定められます。理事会も過半数の出席によって成立するため名前だけの理事というものは存在できません。(理事会は委任を行うこともできません。)また「会長、副会長及び業務執行理事は、毎事業年度毎に4か月を超える間隔で2回以上、自己の職務の執行の状況を理事会に報告しなければならない。」となっていますので半期に一度は活動報告を理事会に提出する義務も発生します。

 次回は法人化における会計について説明させていただく予定です。法人化の中でも注意が必要な部分ですが極力簡単にお話しできればと考えています。

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   第5回 法人における会計

 今回は法人化における会計について皆さんにご説明させていただきたいと思います。会計に関しては専門的な部分も多く、専門家に力をお借りすることになるかもしれませんが会員の皆さんにも基本的な部分に関してお話ししておきたいと思います。

1. 作成しなければならない書類
一般社団法人においては会計書類を作成することが法律で義務付けられています。
① 貸借対照表
貸借対照表とは一定時点における団体の財政状態を示す一覧表のことです。団体の「資産」と「負債」「資本」を対照表示することによって、団体の財政状態を明らかにする報告書です。資金の調達源泉と、資金の用途が記されています。貸借対照表は、資産、負債、資本の分析をすることで、団体の安全性や手元流動性を判断することができます。
② 損益計算書(正味財産増減計算書)
損益計算書とは、団体の会計期間(通常は1年または半年)の運営成績を表す計算書です。1年間、収益と費用を記録・計算して、収益から費用を差し引くことによって、当期純利益(儲け)を算出するしくみです。差し引いたときの符号がプラスなら利益(儲かった、黒字)、マイナスなら損失(損をした、赤字)というように利益と損失がわかる計算書です。
 これらの書類は10年間の保存が義務付けられていて、総社員の10分の1以上の議決権を有する社員型の閲覧請求があれば、それに応じなければなりません。会計の透明性が厳しく要求されており、理事だけでなく士会の運営にかかわるスタッフは今まで以上に会計に対する高い意識が要求されることになります。
2. 税務に関して
 一般社団法人は営利型と非営利型に分けられそれぞれ非営利型の一般社団法人については収益事業のみが課税対象となります。会員の会費はそれを別に定める旨を定款に記載しておくことで非課税扱いとなります。しかし研修会の参加費等に関しては例えそれが公益性の高いものであっても収益部分については課税対象となります。現在県士会主催の研修会の参加費が会員の場合は、ほとんど無料なのはこういった税務を意識している部分もあります。つまり県学会などでも参加費を高く設定して、参加者だけが負担するような形式をとってしまうと利益が発生した場合には、課税対象になってしまうのです。しかし公益認定を受けて公益社団法人として登録されると、こういった公益目的事業に関しては原則非課税扱いとなります。
 5回にわたって法人化に向けてのお話をさせていただきました。ひとまずこのコラムは終了とさせていただきますが他県士会の動向等、新しい情報がありましたら随時皆さんにお伝えしていきたいと思います。県士会の新しい舟出に向けてこれから総会等でも説明をさせていただくことになりますが、よろしくお願いいたします。

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